リビングラボとは、開発プロセスの初期段階から生活者が参加し、企業、大学、行政などの多様なステークホルダーがおたがいの強みを持ち寄って、新しいものやサービスや社会のしくみを共に創っていく、オープンイノベーションのプラットフォーム(場)、そして活動のこと。
テストベッドと呼ばれる実際の生活の現場で生活者の困りごとや楽しみを起点として展開します。
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- 舞台は生活の現場
- 主役は生活者である住民
- 生活者のニーズを起点とする
- 産官学民による多様なステークホルダーによる協働
- 共創サイクルを繰り返し行う
世界には400を超えるリビングラボが存在します。取り扱うテーマや参加するステークホルダーはそれぞれ異なりますが、上にあげた5つのことはどれもリビングラボに必要不可欠な要素です。
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東京大学高齢社会総合研究機構 高齢社会共創センター
活動の企画運営を行い、各ステークホルダーをつなぐ全体のコーディネーターとしての役割を担う。意見やアイデアが出やすい場づくり、評価・分析等の多様な手法を用いて活動を推進するファシリテーターの役割も担う。
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生活者 鎌倉市民 鎌倉市今泉台町内会 NPO法人タウンサポート鎌倉今泉台
①生活者、当事者として開発初期段階から参加する。
②地域住民のハブとして、テーマごとにふさわしい参加者をリクルートし、活動が滞りなく進むよう調整する。
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三井住友フィナンシャルグループ 日本生命 大和ハウス セコム 三菱電機 イトーキ その他高齢社会共創センター会員企業
ベンチャーから大企業まで様々な企業が参画。生活者の多様なニーズにかなう製品・サービスを開発するために、テーマごとに複数企業の参画が望ましい。
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鎌倉市役所
リビングラボ活動全体をとおして、行政としての知見を踏まえて多方面からサポート。
行政課題のテーマオーナーとして、リビングラボの手法を用いた政策立案の検討を行っている。
また、職員も1人の住民としての立場で開発者の一員になり、生活者目線で意見やアイデアを出し、自身の生活の中で実際に利用することで、製品・サービスの課題を洗い出し、活用提案を行う。
人生100年時代の
ワークスタイル・ホームオフィス編
駅からのアクセスが悪く、
高齢化が進む鎌倉市今泉台を
「若者にも魅力のあるまちにしたい!」
ということからプロジェクトがスタートしました。
企業は「明日の働くをデザインする」
(株)イトーキのほか、大手ハウスメーカー、
通信事業会社が参加し、
通勤しなくても自宅で快適に仕事ができる
環境づくりの1つとして、
まずは
「テレワークしやすい家具をつくってみよう!」と
テーマを絞り込みました。
何もないところから産官学民が協働して
つくり上げていく作業は初めての試みのため、
行きつ戻りつしながら製品化にこぎつけるまで、
共創サイクルを丁寧に回して進めました。
生活者起点のデザイン思考手法を多数取り入れ、
みんなのアイデアが
具体的な形になっていく
過程や住民が開発者として中心になっていく様は
リビングラボそのもの。
リビングラボが盛んなヨーロッパの会議で
紹介したところ、先進的な取組として
歓迎されました。
1つの製品ができて終わりではなく、
これをきっかけに次の展開につながっています。
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住民の声
- 実際に生活の場で使うものが生まれることを考えるとワクワクする。
- いろんな職業や立ち場・年齢の方とお話して、視野が広がりいい刺激になった。
- ゼロベースの検討は自由で面白いですね。
- 地域や社会の役に立てるなら協力したい。
- 自分の声がどういう風に活かされるのか知りたい。また参加したい!
- 普段何気なく生活している中で意識していなかった自分のやりたいことや大切にしている価値観を改めて見つめなおすきっかけになった。
- 顔見知り程度だった方が、多彩だったことを発見。まちでお会いしたら話しかけてみようと思います。
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企業の声
- 都心で行うモニター調査とは全く違う生活の場ならではの生の声が聞けた。
- 住民が主体的に参加されていて開発者の一員となっていることに驚いた。
- 実際に使う人たちと一緒に開発できるので無駄なものをつくらずに済み、たとえ途中で迷ってもその声に立ち返ることができる。
- 共創活動に他部署を巻き込む中から,社内でも部署を超えたヨコの繋がりが生まれた。
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行政の声
- 住民が主役となり、地域課題の解決とともに、まちに新しい価値を築くことができる。
- 行政だけでは解決しきれない社会課題、地域課題が山積する中、マルチステークホルダーによる共創の取組に価値を感じている。
- 市民の声を政策に反映させる新しい手法として可能性を感じている。
- これまで地域の活動に参加していなかった住民の方にも参加のきっかけが生まれ、まちに多世代の交流や活気が生まれることが期待できる。
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大学の声
- 大学で開発された要素技術が実生活にどのように役立つか新しい視点を得られた。
- 大学はこれまでにも産学連携や社会連携に力を入れてきたが、リビングラボはその実践の場として機能している。
- 学生が参加することで産官学民の多様なステークホルダーによる地域協働を実践できる人材育成の場になっている。